2011年11月03日
OLDIES BUT GOODIES
学生のときに描いたやつを発見。
せっかくなので恥ずかしながら。
テーマとかとくに決めんで
えんぴつを動かしていた。
そんな絵が、好きでした。

こちらからかける電話は
何時だって、

初雪を頬に溶かす温度の
その低さ
「OLDIES BUT GOODIES」
プライベートな
...But goodies
それってセピア色で限定ではないですよね?
せっかくなので恥ずかしながら。
テーマとかとくに決めんで
えんぴつを動かしていた。
そんな絵が、好きでした。

こちらからかける電話は
何時だって、

初雪を頬に溶かす温度の
その低さ
「OLDIES BUT GOODIES」
プライベートな
...But goodies
それってセピア色で限定ではないですよね?
2011年09月27日
砂のおうこく 『倩夜、一夜』
「倩夜、一夜」
***
月のきれいな夜に、髪を乾かす。
あたりまえの、そんなありふれた夜なのに
この瞬間をずっととじこめてしまいたいような、
もうここから刻が動いてほしくない
そんな心持ちになったのはー
すこしだけ見た夢ー
そのなごりをいとおしく思うから
風が髪の先を揺らし、すうっとあたまの肌をなでてゆく
肌の熱が一瞬だけ浮き上がり、また落ちてゆく
そうしてくりかえして きっと肌はもう冷えているだろう
目を細めるとにじむ月
家にともす灯りを背に
たしかなあたたかみを
ひとの気配を
目を瞑りそっと思い返す真昼の夢ー
海を前に立つ後ろ姿
潮のにおいと踊る髪
水面は遠くからのひかりでまばゆい
ただそれだけの光景なのに
いままで見てきたもののなかでいちばん
うつくしいと 思う
それを言葉にすることもなく
満たされた気持ちでみつめている
ーこれは いつか の瞬間
いつかの、夢
残光はまぶたの裏に
この夜、確かにわたしは見た
流れる星の軌跡を、その一瞬いっしゅんのたなびく燐光を
静かに降り注ぐ、時の舞いおちる欠片を
宵闇の漆黒が暁のひかりで終わってしまう、
このひとつの夜のまぼろしだとしても
星は宙に
月は頭上に
灯す火は家の中に
わたしのこころの水の面は凪いで
すべてのものを閉じこめて遠く 永くへ
ー千の夜はこの一夜にー
光はここに、彼のなかに
ひどく、ゆっくりと目からこぼれた雫は
刻と 同じ速さでおちてゆく
***
(だれもそこにいくことはできない
だから夢のようにそれをみつめている。
声さえかけれずに。
月のひかりをまとう白いその背を、髪を、肌を
みずから光る後ろ姿は
きっと最後の、ときまでも)
***
ぐるり。
これで完!
「砂のおうこく」終了です
2011年09月27日
砂のおうこく アナザー続
「残光と閃光」
***
いま、ぼくのてのひらで「水晶」が虹と、影を落として輝いている。
かすかな灯りのもとで、
浮かび上がる指の紋がゆらりとゆれて
ずっと過ぎてしまった、いつかの声が聞こえた。
「あなたの、もの。わたしには残せるものが、これしかないけど、ごめんなさい」
寝台に灯りは揺れ、枯れ木のような腕
その掌が作り出す影は濃く石だけが変わらないひかりを放っている。
その目は白く濁りいつかの、この石の輝きにも引けをとらない
ー青のひかりを放つあの眼差しはもう見えない。
長年の砂漠の放浪によるものだったのだろう。
彼女のもつ、元来の血はとうとうこの地に順応することなく、
気づいたときにはもう、遅すぎた
肌の病。
ーすべてに負けたー
何に、
その標的すらあいまいで、ただ そのことにうちひしがれるしかなかった、あのさいごのとき。
なにも、守れない。
いや、ぼくは
「何を」
たすけたかったのか。守りたかったのか。
たとえばいろいろな瞬間の、涙。
体のなかからこぼれ落ちる、こころのかけら。
そこからぼくは、何を見いだした?
いや、そもそもー何を、見ていたのだろうか?
あの砂漠のオアシスでの夕日。
沈む大きな太陽、陽炎のゆらめき。
赤く燻された彼女の顔。
あの日に戻ることができるのならばーぼくはどうするのだろうか。
そこまで考えてぎゅっと目をとじる。
その記憶のなかですら、立ち尽くしてしまうぼくの影。
影と、最後の残光とともに生きていくしか無いということ。
ぼくも、「そこにあったはずの」場所をなくした。
金糸の髪を
しなやかな腕を
木の実の型に切られた目の
青く射す眼差しを
祈りにも似ていたそれらを
やすらかな眠りをもたらす家はいまや遠い故郷になった。
***
まとう服がやけに肌に纏わりつく湿った風。
髪が頬を叩く。潮の匂い。
ただまばゆいばかりの生まれて初めて目にする海原を前にぼくは思う。
この風景を君と見ることがあったら
そばで呼吸を感じて、たしかな肌の感触があって
隣で君は、なんと言うだろう。
目を瞑り、首を振る。
「ともに、生きよう これからも」
まぶたの裏のには光る家。
ぼくは生きて、それを見るだろう。それを知るだろう。
きみがそうして生きていたように。
ゆっくりと目を開け
そうして大海を、ひかりの先を
見据えようと目を細める。
***
今はただ。
まっさらな気持ちで
ぼくは「ひかり」をみることはできないけれど
君の色はきっと透明
おなじ、水の色。
互いがー映す事の無い水面
あらゆる、すべての色を秘めたままの。
呼び合う響きはいつか、遠いときをこえて
その答えとともに。
あいまみえるならば それを
伝えよう。言葉の光で
***
砂を噛むようですね。
不毛なものって好きなのかも。
***
いま、ぼくのてのひらで「水晶」が虹と、影を落として輝いている。
かすかな灯りのもとで、
浮かび上がる指の紋がゆらりとゆれて
ずっと過ぎてしまった、いつかの声が聞こえた。
「あなたの、もの。わたしには残せるものが、これしかないけど、ごめんなさい」
寝台に灯りは揺れ、枯れ木のような腕
その掌が作り出す影は濃く石だけが変わらないひかりを放っている。
その目は白く濁りいつかの、この石の輝きにも引けをとらない
ー青のひかりを放つあの眼差しはもう見えない。
長年の砂漠の放浪によるものだったのだろう。
彼女のもつ、元来の血はとうとうこの地に順応することなく、
気づいたときにはもう、遅すぎた
肌の病。
ーすべてに負けたー
何に、
その標的すらあいまいで、ただ そのことにうちひしがれるしかなかった、あのさいごのとき。
なにも、守れない。
いや、ぼくは
「何を」
たすけたかったのか。守りたかったのか。
たとえばいろいろな瞬間の、涙。
体のなかからこぼれ落ちる、こころのかけら。
そこからぼくは、何を見いだした?
いや、そもそもー何を、見ていたのだろうか?
あの砂漠のオアシスでの夕日。
沈む大きな太陽、陽炎のゆらめき。
赤く燻された彼女の顔。
あの日に戻ることができるのならばーぼくはどうするのだろうか。
そこまで考えてぎゅっと目をとじる。
その記憶のなかですら、立ち尽くしてしまうぼくの影。
影と、最後の残光とともに生きていくしか無いということ。
ぼくも、「そこにあったはずの」場所をなくした。
金糸の髪を
しなやかな腕を
木の実の型に切られた目の
青く射す眼差しを
祈りにも似ていたそれらを
やすらかな眠りをもたらす家はいまや遠い故郷になった。
***
まとう服がやけに肌に纏わりつく湿った風。
髪が頬を叩く。潮の匂い。
ただまばゆいばかりの生まれて初めて目にする海原を前にぼくは思う。
この風景を君と見ることがあったら
そばで呼吸を感じて、たしかな肌の感触があって
隣で君は、なんと言うだろう。
目を瞑り、首を振る。
「ともに、生きよう これからも」
まぶたの裏のには光る家。
ぼくは生きて、それを見るだろう。それを知るだろう。
きみがそうして生きていたように。
ゆっくりと目を開け
そうして大海を、ひかりの先を
見据えようと目を細める。
***
今はただ。
まっさらな気持ちで
ぼくは「ひかり」をみることはできないけれど
君の色はきっと透明
おなじ、水の色。
互いがー映す事の無い水面
あらゆる、すべての色を秘めたままの。
呼び合う響きはいつか、遠いときをこえて
その答えとともに。
あいまみえるならば それを
伝えよう。言葉の光で
***
砂を噛むようですね。
不毛なものって好きなのかも。
2011年09月27日
砂のおうこく アナザー

***
「透明とオアシス」
色のない、それはきっと
***
月と日を読み、砂漠に住んでいた彼女は
街へ来て住み始めてからも、空を見上げ、ずっと遠くを見ていた。
砂への望郷か、おぼろげな昔の、その記憶を。
必要最小限の外出のときは肌を見せること無く、
街道のわき、日影になるところを目をふせがちに歩いた。
日差しによる、やけどに近い、真っ赤だった肌は屋内にいることと薬草を水にひたしての沐浴とで
ところどころに茶や黒い斑点があるものの、本来の肌の色、白に戻っていった。
そして、長く腰あたりまで延びた色の無いー白とも黄金色ともいえる、
梳るたびにつやを取り戻してゆく、髪。
灯りをともした家のなか、
その白くなった肌をさすりながら、ぼんやりと、感情の見えない目で
彼女は何を思っていたのだろう。
砂漠以前、生まれ、育った「あったはず」の故郷のことだろうか、と
一度訪ねてみたけれど、不器用に、会ったばかりのときのような
ぎこちない笑顔で首を振った。
ーぼくは、なにを、助けることができたのだろうか?
ただ、必死で失いたくないという感情からここへつれてきて、
自分とはちがう、行く当てもなく砂漠をさまよう住処のないかわいそうな女の子を
救った気になっていたのだろうか。
答えは今日も出ない。
***
日と、月を読む、彼女の雨の「予言」は街のひとから重宝された。
最初は砂漠の魔女だ、と陰口をいうものもいたけれど
ーそれは街に、命にかかわる貴重な生活の知恵で、
所在なさげにしていた彼女に助言を伺いにくるもののほうが上回っていった。
あとはー
彼女は「なにか」をみつけるのが、とても上手なのだった。
魔術のように言い当てて、見つけ出すことが。
「ここ、光っているよ、ひとつ、ふたつ...全部でいつつ、かな」
と、家で飼っている犬のぺたんこの腹をなでながら言った。
そのときは単純に、教えた数字を彼女が覚えた、ということにちいさな喜びをもったのだけれど、
そんなことよりも、それは、そのことは
ぼくが知っていること以上の何かを秘めていた。
それから数週間後には犬はこどもを五匹産み、
「こっちにひかりが、それぞれに移ったよ」と、うれしそうに笑っていた。
彼女のいう、ひかりが人間にもそれはあるようで、出産、出世など良いことから
病気の悪化、死への道のりも見えるようだった。
隠しているようでも、このふしぎな彼女のもつちからはうわさになっていった。
よい兆しには素直によろこび、おずおずと、でもはっきりと、祝福を告げた。
悪い兆し、も同じく。
相談人が帰ったあとの表情は固かった。ーその対象がちいさな子供の場合はことさら、悲しんでいた。
ともにいても、彼女だけしか見ることのできない風景、その場所にずっといたんだ。
ここにいても、ひとりで。
ぼくには見ることのできない風景とともに年月は重なり
それに対する羨望のような、心もとないような幽かなしこりを抱え、それでも。
「あなたの色は、静かな深い、オアシスの色」
そう言われたとき、なんだか恥ずかしいような照れくさい気持ちになり
「君のひかりの色は?」と訪ねると
「わたしのは、わからないの」
と、うつろに時たま見せる、ーあの遠くを見る目、になるので
あわてて、じゃあぼくがいつか見つけるよ、と言ったときは
泣きそうな顔をして、笑ったんだ。
ぼくにはそんなちからが、ないことを知っているのに。
それでも。
木漏れ日のようなきらめきは確かに、
今思えばあのときが一番幸せな
透き通るひかりの恩恵を受けた刻だった。
***
不思議と連載。
「砂のおうこく」アナザーストーリー。
あいかわらず感覚な語り口。
2011年09月27日
みいら
ふしぎな においがしてきたので
かみに くるんでみた
アマランサス バジルシード
びんの なかにはいるものは
みな かわいている
ドライトマト ビーツのピクルス
あんなふうに できていたら
シルクのぬのに つつんでみた
いたむように
ていねいに
その なかでー
おちくぼんだ め は
むこうを にらんでいるのか
かけはなれた ゆめを みているのか
もういちど つちの なかに
いずれも めぐる
いのりを こめて
また あいまみえる そのときに
どんな かんじょうも ないことを
祈る
potato
かみに くるんでみた
アマランサス バジルシード
びんの なかにはいるものは
みな かわいている
ドライトマト ビーツのピクルス
あんなふうに できていたら
シルクのぬのに つつんでみた
いたむように
ていねいに
その なかでー
おちくぼんだ め は
むこうを にらんでいるのか
かけはなれた ゆめを みているのか
もういちど つちの なかに
いずれも めぐる
いのりを こめて
また あいまみえる そのときに
どんな かんじょうも ないことを
祈る
potato
2011年09月16日
乙女宮
欠けたピースは幾つなのだろうか?
完成することがないのならば
個数はその問題ですらない
終わりのかたちをみることがないのならば
それは似て異なる
異なる完成
いくつもの時をこえたらいつか
かたちは結ぶのだろうか
限りなく近いかたちに
それは
いつまでも遠く、そしてすぐそこに

完成することがないのならば
個数はその問題ですらない
終わりのかたちをみることがないのならば
それは似て異なる
異なる完成
いくつもの時をこえたらいつか
かたちは結ぶのだろうか
限りなく近いかたちに
それは
いつまでも遠く、そしてすぐそこに

2011年09月11日
2011年08月20日
古い友人
そしてぐだぐだと飲みながら夜は更けてゆく。
いつもの夜。
ーよっちゃんの古い友人ー
「オナガク(同じがっこう)って会わんけど
電話とかたまにするよな〜?」
「あ〜オナガクね・・・って使わんくね!?何それ初耳!」
「ん〜相談とかねぇ、離れててもそれとなく思い出したりするよなあ」
「まったスルーっすか」
「よっちゃんのオナガクっていまでも連絡したりすんの?」
「てか、よっちゃん前の話とかしないし、ムカトモ(昔の友達)とかと話したりすんの?」
どうやら略語は流行りらしいです。
「けっこー謎だもんな」「そういや知らんかも」
一同、よっちゃんに注目
コップを置いてよっちゃんは言う。
「・・・写真あるけど見てみる?」
『『『見る!(あるんだ!)』』』
食いつきのよい友人たちににっこりしながら
[よっちゃん手帳]からすっと紙を抜き取る。
ごきゅ
だれかの喉が鳴ったのは置いといて
「これ。。。だれ?」

一同?マークが頭上に浮かんでいる。
「ヒッピー?また(逆に)新しいなあ」
「これ写真じゃ・・・」
「いや...長老系やろ...」
(またスルー)
「なかよしっぽいよな」
「両手でピースだもんな」
「まさかのビジョンクエスト受けた系!?」
「いやいやいやいや、くだけすぎっしょ二人笑ってるもん」
「何よ、その何たら系とか。もうおしまい!」
そう言ってよっちゃんは写真をしまう。
すごいインパクトを受けてしまった、
友人たちの謎は深まってゆくのでした。
「あれはファラオ系だ・・・俺には分かる」
「おお・・・ありうる」
「え、ネイティブアメリカン系ではなくって?」
「写真だけど写真っぽくなかったしな。
原画をスキャンしてノイズ除去系?」
「てゆーか括ったら古代系?」
「なに系でもないよ!」
***

思い出を、Tシャツに!
いつもの夜。
ーよっちゃんの古い友人ー
「オナガク(同じがっこう)って会わんけど
電話とかたまにするよな〜?」
「あ〜オナガクね・・・って使わんくね!?何それ初耳!」
「ん〜相談とかねぇ、離れててもそれとなく思い出したりするよなあ」
「まったスルーっすか」
「よっちゃんのオナガクっていまでも連絡したりすんの?」
「てか、よっちゃん前の話とかしないし、ムカトモ(昔の友達)とかと話したりすんの?」
どうやら略語は流行りらしいです。
「けっこー謎だもんな」「そういや知らんかも」
一同、よっちゃんに注目
コップを置いてよっちゃんは言う。
「・・・写真あるけど見てみる?」
『『『見る!(あるんだ!)』』』
食いつきのよい友人たちににっこりしながら
[よっちゃん手帳]からすっと紙を抜き取る。
ごきゅ
だれかの喉が鳴ったのは置いといて
「これ。。。だれ?」

一同?マークが頭上に浮かんでいる。
「ヒッピー?また(逆に)新しいなあ」
「これ写真じゃ・・・」
「いや...長老系やろ...」
(またスルー)
「なかよしっぽいよな」
「両手でピースだもんな」
「まさかのビジョンクエスト受けた系!?」
「いやいやいやいや、くだけすぎっしょ二人笑ってるもん」
「何よ、その何たら系とか。もうおしまい!」
そう言ってよっちゃんは写真をしまう。
すごいインパクトを受けてしまった、
友人たちの謎は深まってゆくのでした。
「あれはファラオ系だ・・・俺には分かる」
「おお・・・ありうる」
「え、ネイティブアメリカン系ではなくって?」
「写真だけど写真っぽくなかったしな。
原画をスキャンしてノイズ除去系?」
「てゆーか括ったら古代系?」
「なに系でもないよ!」
***

思い出を、Tシャツに!
2011年07月26日
ねむる、しずむ

うつくしいけもの
最初の赤に、続く黒
延びる白を見たのはいつだろう。
すきまはいつだって漆黒
風吹くのはここか、あちらか
いづれも遠く、近い。
どこでもないその場所で、とりどりのひかりを見る
いつだってまぶたの裏にひびく水の音は
その色に染まる。
最初の赤に戻ったのなら、闇をみて、そしてひかりを見いだす。
そのときまで、眠り続ける。
それは美しい獣。
2011年07月12日
砂のおうこく

砂のおうこく
「エオラ」
わたしは雨水を、おもに口にします。
今日もわたしのくちびるは、枯れている。
昼は熱をしのげる木陰に。
夜は夜露に濡れない廃墟の土のうえに。
夕暮れまえと、朝日が昇ってのいくばくかの時間に
雲を読み、月を読み、わたしは歩く。
わたしは火を、灯しません。
熱を必要とするのは街の民。
わたしは、日に焦がされ、歩き続ける砂の、おんな。
ずいぶんと昔からそうだったように、今日も風を読み、水をさがす。
***
「砂漠の夜に」
オアシスの泉はまだ遠く、陽炎のむこうの旅団は列をなす。
どこかの村へ、遠くの国へめざしているのだろう。
砂に飲みこまれた、石と骨の街。じきに風化するだろう、そこで
わたしはかれらを見送る。
無風のなか、熱はそこに留まり
朽ちた石の天涯の下、
うとうとといつもの深い眠りがそこまできていることを感じながら。
こんなに青く澄み渡る空のもと、わたしの視界は暗転する。
黒く、ぬりつぶしてゆく。
まぶたをひらくと相変わらずの漆黒。
ひゅう、と冷えた風が体の熱を奪う。
「きょうも、生きていた」
ぼんやりと体を起こすと、
宙の星は河になり、あたまの上の遠いところで瞬いている。
からだにまとわりつく砂をはらい、
夜露をなめて、廃墟からずるずるとはい出す。
からだに巻き付けている布を前でしっかり閉じ、あたりを見回す。
砂の丘がいくつも連なり、宙の低いところに見える月のひかりは丘を這い
しずかに波をうきあがらせる。
その、視界のはじに
ひとつの火のひかりを見る。
赤く、呼吸をするような、火のひかりがひとつ。
月が照らす砂の波の上、静かにそこに。
ひと、がいる。
ー砂漠にはいろんなひとがいる。
野営する商人。街を追われたひと。盗賊。行くところが、ないひとー
くちびるをなめ、息を細く吐く。
意図的に、声を出してみる。そろりと。
だれかに聞き咎められないかというように。
かすれた声。わたしの、声。
わたしは生きている。
布と砂とがふれあう音、自分の呼吸の音を聞きながら、歩き出す。
***
「月ももう昇っているのにこんなところで」
そんなに驚く様子もない声でそう語る。
こんなところ、とは街からはなれた土地で、ということか砂漠で、ということか。
きっとどちらもだろう、
わたしは笑うでもない困ったような、あいまいな表情をうかべて、相手を見つめた。
その声と、しわしわの手の先と、ほぼ鼻の先しか出ていない
頭から包まった布からは、
男のひとか女ひとか、その性別まではわからない。
ーけれども、とても年を重ねたひと。
緩慢に、火にかけた鍋を回す手を止めたのを見て
わたしはくちびるをひらく。
かすれた自分の声がとても小さいのにおどろいて、そのまま声をのみこむ。
ひとと話すのはいつぶりだろうか。
わたしはそのまま立ち尽くす。
「食事を、どうだい?」
老人は言った。さっきよりも幾ばくか静かに。
ひどく、ゆっくりと木べらを持つ手が回り始める。
***
「石を、集めているんだよ」
商人でもないこの老人は宝石になるまえの石、原石の発掘人といった。
探し出す色は、蒼いの、黒いの、赤いの、緑色に紫。まれに黄金色。
そんな石の名前をそれぞれ唱えていく。
聞いたことのないそれらはなかなかわたしのなかで像を結ばない。
やれやれ、とばかりに、体の布をほどくその内側には細い首にぶらさがる
大粒の、緑の石。
緑かと思えば、てらてらとたき火のひかりに照らされて、
緑から群青、黒、また、深い緑へと移ろう。
「きれい、だね」
もう寒くないのにぎゅっと布を持つ手にちからが入る。
疲れていないのに喉からは息がもれる。
よからぬ心をもつものもいるから、あまり他人には見せないのだけれどもね、
と話す声はどこか喜色を含んでいた。
初めて見る石ー
わたしは顔をあげ、その老人の顔を見る。
目は黄色く濁りしわしわの顔は、笑っている。
おんなの、ひとだろうか。
「わたしと、同じ名をもつ、一番だいじな石なんだ」
老人と石を見て
「あなたたちは、ひとつなのね」
そんな言葉がでてきた。
満足そうに笑い、ゆっくりと布を閉じる。緑のひかりは黒く、そのなかに隠れた。
「だれでも、石を持ってるんだよ。そして石は見つけられるのを待っている。
ーずいぶんと、昔から砂のしたで。」
老人はそう言い、布から掌を差し出す。
手の上の透明な石。乾いた指にひかりが落ちる。
あんたの石。
そう言って、わたしの手の上にそれをころがす。そのたしかな重みを感じて
わたしはとまどいの声をあげる。
石は、目に見えるものだけじゃない、あんたのこころの水から、石は選び出されるー
「それは、あんたの石。砂のなかでずいぶん待っていたんだろうね。」
ころりと手のなかの石を転がすと、なかに虹がいくつも映る。
石は水晶、といった。
闇の中にあり、ひかりのもとでその名前をもつ。
目にみえるものと、見えないもの。そのふたつのことを思う。
「素質が、あるかもね」
老人は、ちいさくそう言った。
そして、
月は高くわたしたちの真上に。
ぽっかりと丸くひかりを落とす、ここはたしかに、オアシスだった。
***
「こころの水」
よく手入れされているのであろう、つややかな短い毛をなでる。
わたしの着ている服よりもしっとりとやわらかく、あたたかいその感触に
思わず顔が綻ぶ。
簡素な鞍をつけた馬は長い鼻をこちらに向けておおきな息を吐く。
じゃれながら、思わず後じさった足のうらには草の感触。
くるぶしにかかる草の露の水玉。
さらさらと、流れるちいさな泉のおと。
あたりには背の低い木、高い木が連なり、
足下にはちいさな花が咲いている。
いちめんに、たしかな水の気配。
このオアシスにたどり着いたのは日と月を何回読み返した時期だろうか?
まぶしいだけで、そこにはその返答は見つからないのに
樹の葉の、すきまの太陽を仰ぎ見る。
「ここにいたんだ」
声の方に気安い心持ちで顔を向けると
褐色の肌の少年がゆったりと歩いてくる。
ここに来てから、はじめて出会った、ひと。
さくさくと彼の歩く、草の音を聞き目をかるく閉じる。
樹の、花の、水のにおい。
ひとのにおい。
まぶたのうらは、深い赤。
さがしたよ、という声に目をあける。
わたしを、友人だと言ってくれた、たまに街からやってくる少年。
彼はぶるる、と鳴らす馬の鼻をひとなでしてから
草のうえに座る。
ほら、と差し出す手の上には瑞々しい果物。
黄色い、すべすべしたー宝石のようなそれーを両手でそっと受け取る。
やってくると時折こうして街からの手みやげを持ってきてくれた。
そして彼の話す言葉は、出会った最初のころは質問ばかりだったけれど
砂の上に生きるわたしの記憶はとても不安定で、
そのため味気ない、あいまいな返答からか
最近ではおもに街であったこと、
日々の仕事のことなんかを話してくれるー。
わたしの耳にはすべてがはじめてのことで、日の傾くのを忘れてしまうほど
その遠い話に聞き入っていた。
二人並んで、寝転び青い空やこもれびなんかを見ながら。
「やっぱり街には住まないの?」
話がとぎれて一呼吸、上体をおこしながら彼は言った。
目をそらすと、服のなかに隠した石がころりところがる。
私は首に吊るした石を着ている服ごしにそっと、にぎりしめる。
体温であたたかい硬質な石の感触。
ーわたしは、
こちらのようすをじっと見つめてから、自身の黒く短い髪をがしがし、と掻き
それから前を向いて、彼は言った。
ーたくさんまだまだ、話すことがあるよ。
今日は時間によって太陽のなまえが変わるのを教わったんだー。
彼の目の向こうにはいつだってオアシスがある。
そのまぶしい水面をみるように、わたしはその横顔を見つめた。
***
「赤と黒、そして」
ーーじきに砂嵐がくるんだってーー
夕暮れ時にめずらしくここにやってきて、
馬から下りるなり急いだ様子で彼は言った。
「このオアシスも砂に埋もれてしまうかもしれないんだ」
砂の丘の上にゆっくり太陽は沈んでゆく。
赤く、大きく、滲むそれは「水晶」をくれた老人の話す見たことも無い石の色を思い出させた。
そして、あの夜、月が落ちるように傾くまでなにがあったかを。
稜線のまっすぐに延びる黄金色と降りてくる紫の空。ゆっくりと確実に漆黒に変わろうとするこの刻。
ひとり、心は凪いでいる。わたしは首を振る。
「知っているよ。でも、もうわたしは遠くまで行けないの」
嵐がくるのに、ここにいるってことー、
そういう彼の声はあせりにも似た驚き。
「わたしは、砂と、日と月しか知らない」
そう、思い返してもそれだけくらいのこと。
「わたしはここにきて、あなたと出会った。あなたのなかに泉は見つけれたけれど、
わたしのなかの泉は結局、わからないの」
わたしはどこにも行けない、
しるべも、ないのなら。
そういうと、ぽろりとひとつだけ涙がおちた。
ーもしここで、このオアシスとともに砂に埋もれるなら、この身はいつか水晶になれるかもしれない。
わたしは背を向け林のほうへ歩き出す。
はやく、この身を隠す夜の闇がくるように、溶けこむようにと。
「いまからだって、ずっと生きられるよ」
後ろから少年はそう言う。
手首をつかまれ、思いのほか強いちからでそのままからだの向きを変えさせられる。
向き合い触れる、褐色とわたしの赤。
どちらもじきに夜の色に黒く染まってゆく。
「どんなふうに、砂漠で生きてきたかは、ぼくは知らない。
行き着く街でどんなことがあったかも。それでも、」
もう太陽は半分も沈んでゆくのが彼の影越しに見える。
ーともにいきようー
ひかる、石。
ひかりはここに、ひとの、なかに。
そして
もとは白だったことを忘れた、いまは真っ赤な肌と、
覆う布で隠した色の無い髪。
街はおろか砂の上ですら異端の、
わたしの、すがたに。
***
ますます夜の闇は深くなり、またたく星は落ちてきそうだ。
たき火には新たな薪が加えられ、
最初にくべられた薪はとっくに炭に、灰になっているだろう。
爆ぜるおと。ちらつく赤いひかり。
「石を見つけるときには、じぶんのなかの石を思い描くんだよ。
そうしたら、彼らは共鳴するから」
老人は言う。
わからない言葉がたくさんでてくるので必死にそれを読み取ろうとして、わたしは訪ねる。
「キョウメイ?」
「お互いが、呼び合うってことさ」
すべてのものは、よびあうものなんだよ、この引き合うのに、いつだって孤独だー
そう付け足して言う。
「どんなふうに、見つけるものなの?」
わたしは聞いた。
「思い描いたなら、ぽっかりと、そこは色をもって光り始めるから、すぐ分かるよ」
ほれ、と
老人は腰掛けたすぐそばの砂のなかに枯れた手をさしこむ。
砂に手首までいれたところで「なにか」をつかみ、砂がもりあがる。
砂から引き抜かれた手。指の間から砂がさらさら落ちてゆき
それをふるい落とすようにゆっくり手を振る。
「これはあまりお金にならないたぐいのものだけどね」
開いた手の上にはちいさないびつな石。
たき火の光とは違う、石はぼんやり鈍く光り、ほどなくして消えた。
「いまのひかりで呼ぶんだね」
ため息まじりにそういうと、
「いまのちょっとしたこつがあれば、あんたも見つけれるよ」
水と、石をもとめれば。
「さて、知るからには代償が必要だね」
あいかわらずの声色なのでそのまま聞き流してしまいそうになる。
「代償?ごめんなさい、でもわたし、なにももってないの...」
からからの細い枝のようなからだと、それを包む簡素な服。
そのうえにかぶった大きな布。足には靴。ーいずれもぼろぼろだ。
できることがあれば、というと
老人はすこしだけ残る歯を見せて口をひらく。
「そうだね...」
何か言ったけれど、聞き取ることはできなかった。
「...をいただいていくよ」
そう言ったのを聞くとほぼ同時にいつもの深い眠りがやってくる。
ああ、黒くなってゆく。
「あんたのなかの、水と石、呼び合う孤独な永遠のひかりを、
ひとのなかにも見いだすときがくるだろう、そのことを祈っているよ。」
ー王のいない砂の王国、砂漠の女ー
深い砂に潜るように
どこから響いているか分からない老人の声をそれでもたしかに聞いた。
それが最後の声だった。
朝日に目をさますと、老人も、野営の跡もすでになく、たき火の跡すら、ない。
わたしは見回し、のろのろとそこから歩き始める。
色のない髪が風に遊ぶのをみてあたまから布をしっかりかぶり直す。
「なくなった」ものが何だったかすら、思い起こせずに。砂のなかに置き去りにして。
***
私は砂のおんな。
砂のおうこくで生きていた。
無くしたはずの名前を得て、石になる。
ひかりを得て。
そしてとても永い刻をへてわたしのからだは
砂の奥深くで灼熱に焼かれ固まり、砂に磨かれてゆっくりと石になる。
ーいつか、必ずまたあなたと再会するときがくるだろうー
そのときを、この闇の中でじっと待っている。
深い眠りのなか星の動く音と、わたしのなかの水の音を聞きながら。
いつかの、あなたとの邂逅のとき、
あなたのこころが乾いているのなら、目に見えないこころの水を、
暗闇にいるのならば、ひかりのもとへ。
ともに呼び合う意思として、わたしはそこに寄り添おう。
花も、水も、ひともくりかえして、生きる。
エオラ。
声が聞こえる。眠りからさめるとき、そこに映るもの、
いつか見た色、これから見るであろうすべての色と、
光。
おしまい。
******
時間やら、数字の概念やら省くのってたいへん。。。
えーと時間軸は古代の砂漠地帯っす。
女の子、「エオラ」は異人さんの子だったのでしょう。
砂漠の老人は魔女ですね。
石の魔女。
少年は純粋にひとを助けようとした。
生きているのならば、と。
石のようにそこにとどまる女と、流れる水の少年。
石と、色と、砂漠のお話でした。
ハッピーエンドなつもりです。
2011/7/12
2011年06月30日
夜からはじまる、よっちゃんシリーズ2ndシーズン

今夜じゅうに仕事をかたづける!おし、徹夜だ!と意気込んだこの夜。
コーヒー3杯、スタミナドリンク2本を消費したときに
ちらっと
書類に目をやる。
...終わるのか!??これ?
PCの時計もあるけれど、ケータイの時計を見る。
am2:00 メールなし。
そこまでは覚えていた。
***
ちらっ

よっちゃん、登場です。
2011年06月23日
遠くにて

あとのもの すべておきざりに
ねこだけが ついてきた
てやんでぃ と、
のんだくれたそのひの ゆうぐれ
いつ よるに なったのかなんて わからない
あしもとに すりよるねこ と
きたない レンガのみち みつめると
まっくらなあたりは
いつのまにか ぐるりとかこむように
とりどりの あかりが ともっている
ひが ともる きれいな おとがする
すべてを なげて ここまで きたら
すべてが うまく いくまえ だったのを おもいだす。
ああ、あすこは ばっちりだったのに!
2011年06月22日
2011年06月15日
2011年05月26日
「続きの国のおはなし」***
「バーカウンターのヘブン」
「面白い、話を聞いたよ。ありがとう。」
大きな指で、これまた負けないくらい大きな三角グラスをかたむける、彼は言った。
いいえ、とランプの明かりで飴色にひかるカウンターから足をぶらぶらさせたまま、
わたしは答える。
「あんたも。飲めるかい?”ヘブン”」
わたしは彼の目を見て、うなずく。
「たぶん。いいの?」
彼はまた、ひとくちグラスをなめて、
すこし背中を丸める。
「飲めるなら。...注文は自分でしてくれな。」
首を後ろにかたむけると、すこし離れたところで時が止まったようにグラスを磨くお店のおじさんと目が合った。
眼鏡の奥の目は灰色。橙の照明を反射させた目で、こちらを見ている。
「おまかせしていい?」
灰と橙色をそっと細めて、彼はうなずく。
ヘブン、うたってくれよ、
かすれた声。
その声にわたしはもとの方向に首を戻し、
上目づかいの彼をみる。
照明はなくても、赤く感じる鼻。
その顔をかくり、と下におろし、わたしの足を見る。(今はもうぶらぶらしていない)
目線はわたしの、靴。
「変わったの、履いているんだな。」
「うん。これだけしか、持っていないの。」
ぶつっ、と音がして蓄音機の、音楽が止まった。
「そうか。あんたはじぶんの持ち物のことをようく分かっているんだな...」
シェイカーの音が響く。かんかんかんかん。
おれとちがって。
わたしは背中を丸めた、彼に言う。
「わからないから、探すのでしょう?それだけ、みつけることだけだったでしょう。」
シェイカーの中の氷と、飲み物みたい。
あの「銀の卵」から出て来るまではひとつだったのに。
別々のものが、まざって、ひとつになる。そこは永遠のようで、心地いいけれど。
外に、出ないと。
ーそれがあなたのきらめき。生きたこと。
「はじめから、それで、良かったのかもな。ヘブン。」
胸の前で彼は両手を組む。頭を垂れて。
閉じられた目はきっと、どこにもない、場所を見て。
厳かにちいさく開かれた口は、何を言ったのだろう。
***
こつ、と、小さなグラスが置かれる。
ジュークボックスから、音楽は鳴りはじめた。
フィドルの独奏。
「ねえ、”ヘブン”って、なに?」
おじさんに訪ねる。
店の明かりはこうこうと、かがやく。
”飴色のカウンター”はもう、ない。
「今も昔も、この店の名さ。」
そうっと言う。重ねた年月に思いを馳せるように。
「お代は、結構だよ。」
ありがとう、とグラスを手に取る。
甘いかおり。
「ありがとうは、こちらこそ、だよ。」
アニスの香る、古い遠い国の、味。
広がる色は、どこまでもあざやかだ。
グラスを置く。
その思い出に、わたしはその唄をうたう。
古いその唄をよりそわせるように。
もう往ってしまった 時のうしろすがたにむけて。
*幽霊と、場所と、お酒のはなし。
飲み物と香りが毎回ゲスト。






